
松本清張賞を受賞した森バジルさんの新作は、ノンストップ・バラエティ系・軽ミステリ!
『なんで死体がスタジオに⁉』の概要とあらすじ
バラエティプロデューサー・幸良涙花は崖っぷち。
極度のドジで失敗を重ねた彼女は、次の番組でコケたらテレビ制作から外されることに。
進退をかけた次の番組は「ゴシップ人狼」。
出演者たちがリアルなゴシップネタを持ち寄って話しながら、その中に紛れ込んでいる噓つき(人狼)を探す生放送番組。
しかし本番前に幸良が発見したのは、出演予定の大御所俳優・勇崎恭吾の死体だった!
生放送まであと少し。幸良は無事放送を乗り切れるのか!?
この本を手に取った理由
そもそもこの本を手に取ったのは、「八咫烏シリーズ」原作者の阿部智里先生が書評を書かれていたから。
阿部先生が書かれているコラム「作家の羽休み」(エピソードがとても面白いのでこちらも是非!)にこう書かれていました。
寝る前に軽く読もうかな、と思って手に取ったのに、気付けば一気に読み終わり、興奮のままこれを書いているのも朝の四時ですよ。
今思えば、親のような心配なんて思い上がりも甚だしいですね。
作家の顔なんか忘れて、ネタバレもなく、ただ話の先が気になって夢中で一冊読み終える体験をさせてもらったのですから、私は本当に幸せな読者です。
作家の羽休み――「第99回:森バジルさん新作について」
気になる・・・!!
ポップな表紙とそれに不釣り合いな物騒なタイトルも決め手になりました。
読者を引き込むハラハラドキドキの展開
生放送という緊張感

この作品の見どころは何といっても絶体絶命の中で生放送をどう乗り切るかでしょう。
幸良ちゃんは最初から崖っぷちにいるんですが、
そんな設定が霞むくらいのピンチを背負って生放送に臨むことに。
出演者たちも今後の芸能活動を賭けて、どう立ち回るべきか常に思考しながら番組が進行していきます。
「そっか、生放送だから出演者はこういう所に気を付けないといけないのか」
とか、テレビの制作側が考えていることもチラ見できます。
何が起こるか分からない生放送。
時間的・空間的・精神的にこれ以上ない緊張感に読んでいてヒリヒリしました・・・!
巧みな会話劇
読み始めてすぐ思ったのが会話のテンポがいいということ。
序盤から幸良ちゃんと次郎丸くんのぽんぽん進むやり取りが軽妙なんです。
その後もバラエティー番組の様子が描かれているだけあって、キャラクターの語り口がリアル!
実際ゴシップが語られるシーンでは「それはないわー!」とか心の中で叫んだり、
出演者がスベり倒すシーンでは共感性羞恥で悶えたり。
すっかり視聴者気分でした(笑)
ゴシップという人狼

生放送がどうなるかという話にとどまらず、
現代のテレビの立ち位置やゴシップの本質に切り込んでいるのも本作の魅力。
テレビというエンタメそのものへの愛を感じました。
この物語がただのドタバタ劇の枠に収まらないのは、テレビの光と影の両方を描いているからかもしれません。
ネタバレ注意!!
ここから先はがっつりネタバレしてるので、すでに読んだ方のみスクロール推奨!
ネタバレを食らう前に『なんで死体がスタジオに⁉』を読もう!
未読の方はまとめまで飛んでくださいね。
2重ミステリー

今回の「ゴシップ人狼」は最初から2つの推理要素が用意されていました。
ただ、読者と仁礼さんたち出演者の大半には①しか開示されてなかったわけです。
番組の構成が①+②であることを知っていたのは制作スタッフと一部の出演者だけ。
そして死体の胸に置いてあった新台本は①+②の構成はそのままに、内容や出演者の役割を変えたんですね。
しかも①にはメッセージ、②には復讐の意味合いを持たせる演出になっていました。
語り手のキャラクターが握ってる情報もまちまちなので、
「犯人はこの人か!」
「あれ?違うっぽい…?」
と振り回される感じがたまりませんでした!
2人の名探偵

①+②の謎解きは仁礼さんが、新台本を用意した犯人は幸良ちゃんが突き止めました。
仁礼さんはめちゃくちゃ記憶力が良いことが序盤から明かされていました。
周りから舐められてる中、再起をかけた番組で大活躍できたのは痛快でしたね!
幸良ちゃんの場合は、頭がいいからとかではなく好きだからこそ気付いてしまった。
この生放送を新台本で駆け抜ける決断をしたのも
テレビと彼への愛ゆえだなあとつくづく感じました。
改めてそう考えるとほろ苦いですね…。
『なんで死体がスタジオに⁉』感想まとめ
要素が盛りだくさんなのに、楽しく一気読みできるポップさにびっくりしました。
軽ミステリーと銘打っているだけあって、
ミステリー要素よりも生放送がどうなるかに焦点が置かれている印象です。
物語にのめりこんで楽しみたい方におすすめの一冊です!